オフィスウェルネス
to MHS100 and Beyond |2022.11.24

オフィス・ウェルネス
ワーカーのウェルネスを実現するオフィス環境を構築する

オフィス・ウェルネス

Office Wellness

ワーカーのウェルネスを実現する
オフィス環境を構築する

Creating an Office Environment
That Emphasizes Worker’s Wellness

オフィス建築の性能は、その創成期から業務効率や生産性の向上であることに変わりはありません。そのために労働環境の向上も図られてきました。特に熱環境や光環境に関する改善は長い歴史と技術革新の蓄積があります。しかしそれは短期的、一面的な視点に基づいたもので、持続可能で真に優良な労働環境を実現するには、ワーカーの意欲や健康を実現する包括的な環境づくりが不可欠です。それは長期的な生産性向上を果たす経営合理性にもつながるものです。その具体的な評価手法としてCASBEEウェルネス・オフィスが注目されています。これに基づきながらMHSはウェルネスという視点でオフィス環境構築を行っています。そこでは快適性、安全性はもちろん、ワーカーの健康や、作業環境の選択自由度など、幅広い観点から環境を再評価する試みが始まっています。

オフィスにおける
ウェルネス性向上の重要性

The Importance of Improving Wellness in Offices

経済成長時代のオフィスは、作業効率や生産性を最優先にデザインされてきた経緯があります、またそれは必ずしもワーカーの健康には結びつきません。現代の経営方針は、生産効率を上げることへの偏重から、幸せに労働する環境の実現へとシフトしています。オフィスの運営費用全体の中で、人件費の占める比率は高く、一方、オフィスの建築・内装などのハード部分に必要とされる費用ははるかに少ないといわれています。ハードとしてのオフィス建築の改善がもたらす知的生産性の向上などやプレゼンティーズム(なんらかの体調不良があるまま働いている状態のこと)やアブセンティーイズム(体調不良などの理由による欠勤、休職)の改善がもたらす便益は大きく、オフィス建築に対する投資は効率が高いというのがこの分野の共通認識になってきました。また、近年注目を集めている傾向のひとつは、オフィス作業における知的生産性の一層の向上に向けて、オフィス空間におけるワーカーのウェルネス(Health & Well-being、健康と快適性など)面でのサービス向上に関心が高まっていることです。
 MHSはワーカー視点でのオフィス環境改善に付加価値があると信じ、オフィスで働くワーカーが健康的、知的生産的かつ幸せに働ける空間を提供したいと考えています。特にウェルネス性の向上は経営者や投資家に対する価値向上につながると考えられ改善に向けて研究を積み重ねています。

ウェルネス性向上のための
MHSの方法論

MHS’s Methodology for Improving Wellness

MHSでは多様な働き方に対応したオフィスとは何かと常に考えています。そこには常にワーカーの選択肢が存在すると考えます。

-  ワーカーが働くいろいろな場面で選択できる自由度を与えること

建築的にはまずレイアウトの柔軟さ(空間の形状・自由さ)が重要と考えます。具体的には空間プランニングが自由に変更できレイアウトの柔軟さがあることです。見通しが良く開放的な執務空間がプランニング可能であることなどです。また知的生産性向上の視点から、集中スペース、フォーマル・インフォーマルなコミュニケーションの場、リフレッシュ・リラックスの場などの計画・整備が重要です。
 構造的には荷重のゆとりが重要です。積載荷重2,900N/㎡以上~3,500N/㎡未満が基本ベースで、割増率20~50%相当をオプションとし、ヘビー・デューティゾーンの設定も視野に入れます。
 設備的には区画別運用の可変性が該当します。空調及び照明設備がレイアウト変更に対応した区画に分けて運用が可能であることです。さらに空調設備が同一空間内で細かい区画(グループ単位)に分けて運用ができ、冷房・暖房の選択も適度に自由なシステムが理想です。

-  ワーカーが安心して働くことができる環境を与えること

ここでは主にBCP(事業継続計画)が基軸となります。まず耐震性では躯体の耐震性能が建築基準法に定められた耐震性に対しオプションとして割増率25%~50%を検討します。また免震・制震及び制振装置といった建物の揺れを抑える装置を導入することによって、地震時・強風時の内部設備保護が図られている範囲をいかに拡げるかがポイントです。
 設備の信頼性については、受変電設備の浸水対策の視点から、地下空間及び1階の設置を回避、異なる変電所からの引き込みの二重化、非常用発電設備及び無停電電源設備の設置要否に加えて災害時に電力供給箇所のエリア設定などが提案項目となります。

-  ワーカーが快適かつ安心に働くことが維持できる体制(ハード・組織など)を与えること

建物の維持管理用の機能を確保することが長期的なワーカーのウェルネスを維持します。維持管理に配慮した設計はウェルネス上評価されます。例えば、汚れにくい、または清掃しやすい内装計画になっているか、清掃を行うスタッフの諸設備(適正な控室面積、管理倉庫など)は充実しているか、また外部ガラスや外壁、給排気口、照明など高所での維持管理作業が安全に行える設計となっているかなどビルサービスを提供する上で基礎的なことも重要です。日々の維持管理だけでなく、中長期的な維持保全計画を保持し、実施体制が組織として確立されていて、計画が実行されていることが評価されます。さらにワーカーの満足度を調査し、そのフィードバックが改善策に反映されることが理想です。

-  ワーカーの健康増進をサポートできる体制・プログラムを担保すること

コストと相談しながらウェルネスの視点で在室ワーカーに対して選択肢が提供できるつくり込みが理想です。こうしたいけどこのビルできないの?という不満は個人ストレスにつながり、そのテナント企業のストレス、しいてはビルオーナーのストレスにつながる可能性があります。MHSはそのような不満をなくすだけでなく、ワーカーが気持ちよく働ける空間づくりが世の中のプラスになると考えます。

CASBEE-ウェルネスオフィスプログラムの実践

Practicing CASBEE Wellness Office Program

CASBEE-ウェルネスオフィスは、建物利用者の健康性、快適性の維持・増進を支援する建物の仕様、性能、取組みを評価するツールになります。建物内で執務するワーカーの健康性、快適性に直接的に影響を与える要素だけでなく、知的生産性の向上に資する要因や、安全・安心に関する性能についても評価します。
 このプログラムは前半2/3が建物オフィスの基本性能(QW1健康性・快適性、QW2利便性及びQW3安全・安心)を評価、後半1/3が設計後の評価項目(QW4運営管理、QW5プログラム)となっています。MHSはビルオーナー及びテナントユーザーと長い付き合いを想定してそのノウハウを提供し、MHSと建築主・ユーザーがウィンウィンの関係になれることが理想です。この部分の相談も増えつつあります。
 以下に本プログラムに沿ってMHSが注力する部分を紹介します。

CASE | 01 ウェルネス設計

Wellness Designs

-  専用部階段 その位置とアクセス表示

ウェルネスの視点では室内運動が重要と考えられ、オフィス内の縦フロア移動手段では、専用部室内階段での移動が推奨されています。日常の中で、無意識のうちに利用者の運動量を増進・促進させるデザインは「アクティブ・デザイン」といわれています。それは掲示や表示による階段の利用促進だけでなく、建築計画的な階段の位置や内装計画にて魅力的な空間を創出するなど、階段の利用を促進する取組みについて評価されます。そのために将来その選択肢が選べるよう、構造的にヘヴィ・デューティ・ゾーン(HDZ:サーバー室や書庫など荷重が必要な施設を置く場合を想定して、一部分の床荷重を補強しているエリア)_の設定と合わせ、プロジェクトごとの建築計画上適切な専用部階段ゾーンの設定をすることを提案しています。

-  設備機器の区画別運用の可変性

空調設備及び照明設備が同一フロア内で、ある程度の区画に分けて運用できることが重要です。ウェルネスの視点では、空間レイアウト変更に空調や照明設備が追随することを評価するとともに、利用状況に合わせた冷暖房選択や自由な照明制御が重視されます。具体的には、空調・照明区画の制御ゾーニングの細かさがポイントで50~75㎡/ゾーニング程度を提案します。一定レベルの個別性を保ったオフィスの可変性に対する空調及び照明設備などのフレキシビリティがワーカーのストレスを減らし満足度を向上させます。

CASE | 02 維持管理サポート

Maintenance Support

CAEBEEウェルネスオフィスでは評価の焦点をワーカーの健康に当てているため、竣工後でも建物が適切に運営管理されていることが評価の対象となります。そのためMHSではウェルネスの観点も踏まえて竣工後にも建物の維持管理がスムーズに運ぶよう維持管理項目の整理などのサポートを行います。具体的には建築計画や設備システムの調整です。
 まず品質の高い管理レベルを維持できるよう基本的なオフィス機能が必要だ。たとえば清掃に関しては適切な清掃員控室(延床面積の0.2%以上)や清掃用具室(延床面積の0.12%以上)の面積を確保するなどが基本となり設計時の配慮項目のひとつとなります。
 また大規模で複雑な設備のある建物では初年度のシステム運用状況を確認し、適切な室内環境が形成されているか、また各ワーカーに対してムラなく効率のよい温熱環境が形成されているか、確認・調整を行います。あるプロジェクトでは、空調設備システムの運用時における調整(コミッショニング)に加えて、ワーカーに対して適切な環境を形成できているかを確認するために室内環境測定及びアンケート調査を行いました。アンケート調査では室内の温熱環境や光環境、空間環境、音環境などを総合的にヒアリングし、運用上の改善点を明確化し次年度以降の運用へフィードバックしました。ワーカーに対してヒアリングを行い運用へ反映できる体制を整えることはウェルネスを向上させる上で重要となります。

CASE | 03 健康プログラムサポート

Health Program Support

長時間労働など、仕事のストレス蓄積は日々の疲れとなり、プレゼンティーズムによる仕事の生産性低下につながり、その状態が長く続くと、アブセンティーズムに陥る可能性があります。健康診断やストレスチェック及びカウンセラーによるサポート体制など、MHSはワーカーのメンタルヘルス向上や労働安全衛生に資する取組みの内容と実施頻度のチェックなどがウェルネスの重要項目であることを伝えています。
 ワーカーの健康維持や増進に寄与するプログラムもウェルネスには重要です。2019年末より発生した新型コロナウイルスをはじめとし、花粉やインフルエンザウイルスなどの感染拡大、被害縮小を図る上でビルエントランス部での対策や設備の設置などは、利用者の健康維持においては有効な対策で評価されるべき取組みです。MHSでは上記のような取組みの推進に加え、オフィス内での必要な換気能力(風量・回数)やフィルタリングなどのハード面でもアドバイスを行っています。
 ワーカーの健康を増進する取組みとしては、通勤時の自転車利用、シャワールームやスポーツジムの設置などがあります。MHSはこれらを利用可能とする企業サービスの重要性だけでなく、ソフト面では社内クラブ活動の有無、クラブ活動への補助、健康セミナー、メンタルセミナーなども重要な要素であることを説明しています。

CASE | 04 維持保全計画・中長期保全計画

Maintenance Planning and Mid- to Long-Term Maintenance Planning

建物の中長期的な維持保全計画は、施設自体の保全を図るとともに、施設情報管理や施設サービスの向上を目的としています。計画的保全の具体的方法を実行し、継続的に改善していくためには、組織改革を含めた保全体制の改善と関係者の意識改革が欠かせません。この計画性の有無と実効性の要否がワーカーの長期的なウェルネスを維持する上で重要な要素になるといわれています。
 一般的に建築物は竣工後10年、20年すると設備システムの効率の低下や内装材の劣化などが目立ち、大規模な改修が必要となります。竣工以降における大規模改修や設備機器更新、建築部材更新の周期やコストの整理を行い、中長期保全計画を立てることで適切なタイミングで維持保全を行うことができます。MHSでは維持保全を踏まえた適切な建築・設備計画を行うとともに、中長期保全計画についても豊富な実績を織り交ぜながらアドバイス、サポートします。具体的には、建築部材や設備システムの更新頻度や改修コストの試算、改修方法の検証など、検討内容は多岐に渡ります。
 また、詳細設計では建築各部の維持管理への対応性も求められる。床材や壁材、衛生器具の清掃のしやすさや、設備機器類、建材の手に入りやすさについても十分精査した上で維持管理上支障のない計画を行う必要があります。長期的な観点と日常的な観点をあわせて検討、協議を行い、総合的にウェルネスの高い計画を行います。

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