羽田空港
LIFESTYLE |2019.10.09

空の旅をポジティブに彩る
メガ空港を60年以上に渡って。

松田平田設計が60年以上に渡って携わってきた日本の空の玄関口「羽田空港」。
単なる旅の中継点ではなく、利用者にとって満足度の高い空港を作るには、何が求められるのか。
関係者の声から読み解きます。

ともに「日本の顔」を手がけてきた。

日本空港ビルデング株式会社
執行役員
施設計画室/東京オリンピック・パラリンピック推進室 室長 松田圭史さん

中央の大きな吹き抜けが、圧倒的な開放感に。

羽田空港の年間利用者数は8,500万人。大勢のお客様にご利用いただく上で肝に銘じているのは、「空港は、旅の印象を大きく左右する」ということです。まして外国から訪れたお客様にとっては、「空港の印象=日本の印象」と言っても過言ではありません。東京の顔となる空間をいかに形作るか。そのことを松田平田設計さんとも追求してまいりました。

たとえば、第2ターミナルビルの建築にあたって提案していただいたのが、建物の中央にある「大きな吹き抜け空間(ライトコーン)」です。これによってターミナル全体に開放感が生まれました。お客様がチェックインロビーに足を踏み入れた瞬間に、目の前がパッと開ける。旅の始まりをポジティブに彩る空間です。「建物の中央に吹き抜け」というわかりやすい目印を設けたことで、空港のなかで自分の現在地を直感的に把握できるようにもなりました。

上層階にはどういった商業施設があるのか。どういった経路で、そこまで行けるのか。これらを視覚的に理解できるのも特長です。すべてはお客様が空港のなかを移動する際に感じるストレスを和らげるための設計です。

最高レベルのセキュリティと、開放感とを両立するために。

すばらしい旅の印象を演出しながら、最高レベルのセキュリティを両立するのが空港です。危険物の受け渡しなどを未然に防ぐために重要となるのが、当空港から出発するセキュリティチェック済みのお客様と、ほかの空港から到着するお客様との導線が交わらないようにすること。第2ターミナルでは、ほかの国内空港に先駆けて、出発ロビーと到着ロビーとを階層分けして完全分離しました。

セキュリティ対策に万全を期すことと、この空港らしい開放感を両立させたこともポイントです。到着したお客様をターミナルへと導く通路を、全面ガラス張りにしたのはそのためです。夜間の到着であれば、たくさんの飛行機や機材が夜景のようにきらめく様子を目にできます。これも「ああ、東京に来たのだ」と、旅の実感を高めていただくための演出のひとつです。

羽田空港から飛び立つお客様と、ほかの空港から羽田に到着するお客様とが交わらないようにすることでセキュリティを担保しながら、羽田空港らしい開放感を維持した。

多様性と統一感、ふたつが共存するラウンジに。

2018年の12月にオープンした北サテライトも、松田平田設計と二人三脚で進めてきたプロジェクトです。2階の出発ロビーと3階の到着ロビーとを吹き抜けでつないだことで、これまで以上に気持ちのいい空間に仕上がりました。この空間で用いるインテリアも、セレクトしました。空港でよく見かけるベンチ型のシートだけでなく、吹き抜けを見上げられるリクライニングシート、家族みんなで座れるソファ、ほかにも電源コンセントや充電用USBポート付きのデスクまでを取り揃えています。これは多様化する旅のニーズに応えるための配慮です。空港での過ごし方は人それぞれ。誰もが快適に過ごせるロビーを目指しました。一方で、空間全体のトーンは乱したくありません。多様性と統一感とのバランスがとれた空間を形にするには、空間そのものをデザインした人と、膝詰めで細部まで練り上げていくのがベストです。

細部にこだわり、どこかにアクセントを効かせるのが松田平田。

長年に渡るお付き合いを通じて松田平田設計に感じるのは、細部にまでこだわって仕事をしてくれるということ。空港にはさまざまな制約があるので、シンプルな設計に落ち着きがちですが、制約をクリアした上で、きちんとアクセントを効かせます。たとえばエレベーターの扉や、ちょっとした手すり。些細な部分にまで機能性とデザイン性を兼ね備えた提案をしてくれます。この「小さなこだわり」の積み重ねが「特別感のある空間」という印象につながるのでしょう。

空港とは、ある意味で決して終わりのない建築物です。今後も時代の変化に寄り添いながら、絶え間なく変化していきます。刻々と変化する空港のあるべき姿を共に模索してほしいと思っています。

旅の始まりにふさわしい
「空港感」に満ちている。

ANAエアポートサービス株式会社
旅客サービス部 国内業務課 木村圭佑さん

ほかにはない開放感や明るさ。これが第2ターミナルらしさです。

開放感、明るさ──。羽田国際空港第2ターミナルの魅力です。私は、同・国際線ターミナルから同・第2ターミナルに異動になった4年前からそんな風に感じてきました。チェックインロビーには大きな吹き抜け空間(ライトコーン)があって、ここには太陽光がたっぷりと降り注ぎます。

視認性にも優れたこのシンボリックな空間は、第2ターミナルの中央部にあたるため、お客様からすると直感的に自分の居場所がつかめます。実際のところ、私がカウンター業務を担っていた当時は、お客様の道案内をする際の目印として、毎日のようにライトコーンを指さしてきました。

飛行機が近い。だからこそ旅の気分も格別。

搭乗ゲートから滑走路に目を向けると、ズラリと並んだ巨大な飛行機が目に飛び込んできます。ここまで飛行機が近い空港は珍しいでしょう。全面ガラス張りで、滑走路の様子がしっかりと見渡せるから「空港感」も格別です。これから飛び立つ人たちと、羽田に降り立った人たち、双方の旅情に強く訴えかけるものがあります。

お子さまのひとり旅を、搭乗ゲートまでお見送りに来られた親御さんからも、この眺めの良さは好評です。ほとんどの親御さんは、お子さまを飛行機に乗せた後もその場からは離れず、飛行機が離陸するまでずっと見守ってらっしゃいます。ここでなら無事に飛び立つまでを見届けられるからです。

シンプルで移動しやすいから迷うことがない。

巨大な空港ではありますが、形は実にシンプル。移動の方向はほとんど一方向に限定されるため、迷うことはありません。常に視界が開けていることも特徴です。お客様同士がぶつかることなく安全に行き来できる道幅も確保されています。このあたりも第2ターミナルの良さではないでしょうか。

あらためて振り返ってみて実感しましたが、ここはすべてのお客様が、旅の始まりを強く感じられる場所。心地良く利用できるのは当然として、空港感をしっかりと感じられるように設計された優れた空港です。


プラスアルファの提案で、
空港にさらなる彩りを

松田平田設計 設計チーム

60年以上、変わらぬ姿勢で向き合ってきた。

松田平田設計と羽田空港の関係は60年以上に及びます。1964年に竣工された初代ターミナルの設計を、弊社の創業者・松田軍平が手がけて以来、旧第1旅客ターミナルビル、第2旅客ターミナルビルと、節目節目で旅客ターミナルの設計を担ってきました。私自身は2000年前後から、羽田空港のプロジェクトに携わっています。

15年以上に渡る仕事のなかで常に心がけてきたことは、空港の魅力をプラスアルファする提案をすることです。単なる交通施設にするのではなく、空港を訪れる人たちがワクワクする空間にする。そのためにはどんな工夫が必要か。その問いを続けてきたことが、私たち松田平田設計のこだわりです。

海と滑走路を間近に感じられる北サテライト。

第2ターミナルの設計時には、建物の中央に「巨大な吹き抜け空間(ライトコーン)」を設けることを提案しました。「今から飛行機に乗るのだ」という気分を盛り上げるには、開放感のある華やかな空間でお客様をお出迎えすることが大切。そう思ったからです。プロポーザルの段階からあったこのアイデアが、文字通り第2ターミナルの軸となりました。

2019年12月10日にオープンした北サテライトでは、特別感のあるロビーを生み出すことに心を砕きました。第1、第2ターミナルから離れた場所にあり、商業施設も備えていない北サテライトは「飛行機を待つだけの退屈な場所」と誤解されかねません。それを避けるために、到着ロビーと出発ロビーを吹き抜けでつないで開放感を高めました。家具にもこだわることで、ラウンジのようにくつろげる空間を目指しました。全面ガラス張りのファサード越しに、海と飛行機を眺めながら、出発までのひとときを楽しめるはずです。



完全なまでのストレスフリーを目指して。

バリアフリーの観点からも、プラスアルファの提案を続けてきました。たとえば、第2ターミナルの到着コンコースの長い通路に設置された手すり。当時の規定通りに作るなら、手すりはスロープに設置するだけで十分でした。しかし、お年寄りや身体が不自由な方にしてみたら、移動の途中でひと休みする場所が欲しいもの。そこで「たとえ平坦でも、長い通路には手すりをつけませんか」と提案した次第です。常に利用者の側に立って細部にこだわることで、使いやすい空港は形になります。

北サテライトでは、2020年のオリンピック、パラリンピックを見据えて、さらなるバリアフリー化を進めました。通路も従来幅より広くしたほか、案内掲示も多言語に。制約が増えれば増えるほど、限られた敷地内でのレイアウトは難しくなりますが、そのハードルを越えることこそが私たちの仕事です。目指すは「バリアフリー化している」という印象さえも与えない施設。誰もが何のストレスも感じずに利用できる空間にできたら最高です。

前例のないアイデアは、感度の高いクライアントがいてこそ形に。

私たちが提案するさまざまなアイデアが実現してきたのは、クライアントが日本空港ビルディングだったからにほかなりません。特に前例のないアイデアは、常に最高レベルを求める先進的なクライアントからの理解があってこそ。より良い空港にするために、アイデアのキャッチボールをはかりながら、常に切磋琢磨してこられたことは、私たちにとって大変な幸運です。

航空需要の高まりを受け、羽田空港にはさらなる進化が求められるでしょう。実際、すでにいくつかの増築プロジェクトが走り出していますが、私たちがやることに変わりはありません。利用者目線でプラスアルファの提案をするのみです。羽田空港に携わるなかで先輩方から受け継いできた松田平田のDNAを、今度は後輩たちに引き継いでいきたいですね。





この記事に使用されているタグ

空港・交通施設 に関するお問合せ

PAGE TOP