驚くほどの臨場感を観客に——。
2018年の改修を経て、まったく新しい観戦体験をもたらす
ラグビー専用スタジアムへと進化したラグビータウン熊谷の新名所。
パナソニック ワイルドナイツの関係者の声から、熊谷ラグビー場の真価に迫ります。
これだけ近いと、
選手の息づかいすら聞こえてくる。
熊谷ラグビー場は、日本では珍しいラグビー専用のスタジアム。この出来映えは文字通りワールドクラスで、日本国内では間違いなく指折りです。普通どこのスタジアムにも観戦しにくいシートがあるものですが、このスタジアムにはその常識はあてはまりません。グラウンドに近い前寄りのシートだと選手の息づかいが聞こえるほどの臨場感、上のほうのシートだとグランドを真上から観ているようなフィーリングで最高。少しコンパクトですが、極めていい作りのスタジアムです。
選手とオーディエンスの距離が、手が届くほど近いことも長所です。ゲーム終了後に、オーディエンスは選手に握手を求められます。この近さでラグビーの臨場感を味わい、選手と交流したら、みんなラグビーファンになってしまうでしょう。そして、このスタジアムを再訪したいと思うはず。私も来年のワールドカップはぜひ観客として、このスタジアムの最前列でラグビーを楽しみたいですね。
どのシートでも、見応えタップリ。
このスタジアムの十八番です。
ワールドクラスのスタジアムから、
新たなラグビーファンを。
ラグビーに関わる身としては、このスタジアムを起点としてラグビーファンを増やしていきたいと思います。もちろん、最も大切なのは選手がいいゲームをすることですが、このスタジアムだと会場周辺のスペースを使った催しで、ラグビー以外の体験も提供できるのが素晴らしい。集客力のあるイベントを催せば、このスタジアムに新たな価値を付け加えられるでしょう。
プレイする選手のことも大切に考えているのがこのスタジアムです。たとえばロッカールーム。驚くほど広々としていて、本当に居心地がいい。関係者がロッカールームに至るまでの動線もよく考えられていて、移動にストレスがありません。スタジアムのクオリティは、選手たちのパフォーマンスや勝敗にも影響するものだから、熊谷ラグビー場のような優れたスタジアムがもっと増えてほしいですね。ここまで素晴らしいスタジアムができたことは、私たちラグビー関係者にとって文字通り追い風です。
テレビを通じてでは味わえない
臨場感、熱気、迫力を味わえる。
ファンと選手が気軽に交流できて嬉しい。
中学生の頃から改修前の熊谷ラグビー場でプレイしてきた僕にとって、改修後のスタジアムは驚きの連続です。かつては芝のスタンドがあっただけでしたが、今では一人分ずつ区切られたシートだけでなく屋根も設けられました。スクリーンには得点が映し出されるだけでしたが、ゲーム中のリプレイ表示がされるようになりました。今回の改修によって、熊谷ラグビー場は「ファン思いのスタジアム」へと進化を遂げたわけです。
なかでも選手と観客との距離が近いのが最高です。多くの競技場はピッチのまわりに陸上競技用のトラックがあるため、観客席とピッチはもっと離れています。ところがこのスタジアムにはトラックがないため、手を伸ばしたら客席に届きます。僕たち選手にとっても交流しやすいことは大きなメリットです。ラグビーのファンを、もっともっと増やしていきたいですからね。
ラグビータウン熊谷から、
全国にファンを増やしたい。
ファンとの距離が近いスタジアムでプレイすると、声援もしっかり届きます。その結果、選手たちはいつも以上にパワーを発揮できます。広々とした円形のロッカールームも素晴らしいです。ここにはシャワールームが完備されているだけでなく、疲労回復を促進するアイスバスがあるのも嬉しい。「ファン思いのスタジアム」というだけではなく「選手思いのスタジアム」でもあります。
テレビを通じてでは味わえないゲームの臨場感、熱気、迫力。これらを思う存分に味わえるスタジアムが、僕の出身地である熊谷市に生まれたことは、個人的にも感慨深いものがあります。「ラグビータウン熊谷」から、全国にラグビーファンをもっと増やしていきたいし、ここを起点としてもっと熊谷全体が活性化してほしい。スタジアムのこけら落としに立ち合った今は、そんな風に感じています。
世界のトレンドを睨むことで、
ワンランク上のスタジアム体験を。
「近く」と「観やすく」を両立するために。
ワンランク上のスタジアム体験を。設計するにあたって、最も心がけたことのひとつです。具体的にはどうすればいいのか。思案するなかで思いついたのが、フィールドと観客席との距離を縮めることでした。改修前と比べると、フィールドから観客席の高さは1.3メートル、距離は8メートル近くなりました。これは他のスタジアムと比較しても断トツの近さです。ケタ外れの臨場感は、こうして生み出されました。
「近くする」は世界のスタジアムのトレンドですが、距離が詰まれば詰まるほど、観客席では前に座る人の頭部が観戦の邪魔になるのがデメリット。そこで、観客席ごとの段差を一段ずつ変えることで、どの席からも一番手前のフィールドラインまでが目に入り、ゲームに没頭できるように工夫しました。シート毎の段差の違いは、わずかです。見やすさを追求して計算を何度も何度も繰り返しました。
ユニークな仕掛けで、
観客と選手にかつてない恩恵を。
県の施設であるこのスタジアムには、中高生から大学生、社会人、トップリーグの選手、日本代表など、さまざまな選手が訪れます。当然ゲームの規模感もさまざま。そこで飲食物の販売は、ケータリングカーをスタジアム内に入れることで、規模によって出店数をコントロールできるようにしました。これは比較的、新しい取り組みだと思います。入れ替えが簡単なケータリングなら、店舗のラインナップが飽きられにくいのが長所です。ケータリングカーの周囲には、にぎわいも生み出せます。
ロッカールームの設計もユニークです。サッカースタジアムでは通常ホームチームの部屋は少しリッチに作りますが、ラグビー専用のここではすべて同じ仕様で、広々と使えるサイズ感。しかも円形です。これだとロッカールーム内で円陣を組む様子が、スタジアムの大型モニターに格好良く映ります。中央で指揮する監督が、チーム全体を見渡しやすいことも、円形であることの利点です。
2019年のラグビーワールドカップの
開催を見据えて。
本プロジェクトでは、施主である県の担当者に限らず、ワールドラグビー協会や日本ラグビー協会の方にもヒアリングを行いました。そこでの意見を踏まえ、最近のスタジアムのトレンドを押さえつつ、最先端のスタジアムになるようワールドクラスのアイデアも取り入れています。日本でラグビーワールドカップが初開催されるのは2019年。国内外からの多くの来場者が期待されます。世界中の観客のみなさんから、スタジアムがどのように受け入れられるのか。今から楽しみにしています。